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【故高田信一氏を偲んで】

故高田信一氏  明治小学校から教師生活が始まり、その後、高田小学校で教鞭をとられています。昭和30年前後ではないかと思います。高田小学校時代の教え子がまだ高田にいると思います。松岡小学校の校長を最後に退職し、続高田村志の執筆編集や高田の歴史調査に尽力をされてきました。
また、[ふるさとの歴史教室]の会長を長年されてきました。また、高田校区では自治会長や長寿会の会長もされていました。享年92歳 
*このホームページにも昭和28年の高田小学校の写真を提供していただきました。

4月28日に老衰で亡くなられた高田信一氏のふるさと講座の記事が多くの方に関心が持たれているようです。故高田信一氏の歴史に関する記事を再度アップしたいと思います。

  • 第一回 「大分方言」について -主として高田を中心にー   高田信一  《P1》
  • 第二回  地名の由来とその歴史 高田   高田信一           《P2》
  • 第三回  岡松甕谷   高田信一                    《P3》

[大分方言」について  ー主として高田を中心ー  [大分方言」について [高田ふるさと講座 第一集]

[令和2年10月の再アップ記事です]

高田公民館主催行事の一つとして「高田ふるさと講座」が昭和61年に開講しました。そして平成4年にこれまでの30回の業績を小冊子としてまとめられました。それが「高田ふるさと講座 第一集」です。
この冊子を前高田公民館主事中村英夫氏よりお借りしました。
その一部は「続高田村志」にも引用されています。

さて、私が若い時に友人と熊本の旅館に泊まり、広間で食事をしている時、友人が何気なく、[よだきいのー]というと、一つの集団が大笑いする。そこでまた友人は畳みかけるように、[めんどしいのー]というとその集団がまた爆笑。
しかし、その若い集団も竹田の方の人たちで大分方言に懐かしさを感じたのか笑ったのだろう。そのあとはお互いに親しくなり談笑を交わしました。

今回はその中の [大分方言」について [高田ふるさと講座 第一集]
 ー主として高田を中心にー 高田 信一
  
 を引用してみたいと思います。


いま私たちが使っていることばは、所謂方言をかなり使っていることが多い。私たちが高田で使っている方言は大分県のすべてに当てはまるのではなくて、県内でも大きく五つに細分化されている。
それは大分県は他県と違って大友宗麟以後、(びわのすHP 高田村史第2回に記述)小藩分立、自然的な条件等により、こうした言葉の違いが生じたものと思われる。
私たちの住んでいる高田は南部に当てはまるようである。

途中省略

方言の特徴を捉えてみたいと思う。
[よこう]について
これは[いこう]という古語がそのまま現在も使われているもので、[いこう]の[い]が[よ]に訛ったものである。その使われ方をみると

よこうちょる      …………  欠席している 休んでいる。
よこいじゃ      …………   休憩だ
今日はよこいじゃ  …………   今日は非番だ。
今はよこいじゃ   …………    今はひまだ。休憩中だ。

というように用いられている。

よこい というひとつの言葉がこのように使われ方が多岐にわたっていることは、語いがすくなかったということからおこっているものだとかんがえられる。

つぎに方言のすばらしさ、よさとして、
[ヨル] 【チョル] について

バスがキヨル   バスがキチョル    
雨が降りヨル   雨が降っチョル
という使い方を見ると、標準語では、[バスが来ている]といっただけでは、現にここに来てしまっているのか、今来つつあるのかははっきりしない。ところが、方言で表現すると、今来つつある時は、、[キヨル]といい、既にバスが来ている時の表現として、[キチョル]とはっきり使い分けられる。この点、方言の方がはるかに優れているということがわかる。

[ミユル] [キコユル]について

みえる、聞こえるという言葉を方言でミユル、キコユルと言っている。この言葉は、奈良、平安のころから使われていたそうである。
方言には、このように古語がそのまま現代にまで使われているものがこの他にもあると聞いている。こうした現象は、九州独自のものであるともいわれている。

途中省略

大分方言で書かれた代表的な文学作品として

〇海神丸       野上弥生子
〇豊後浄瑠璃    北原白秋  ・ 他
〇吉四六ばなし
〇蠅・芋・指環    横光利一

などがあげられる。お暇の折には読んでみるとおもしろいでしょう。

方言集 ( 高田信一)   
《高田氏の方言集のなかから普段よく聞いている言葉を抜粋してみました。いくつ分かりますか。例を追加してみました 》

アユル  ……果実などが熟して落ちる。(例)栗の実がアユル  
イラブカス… からかう いつわる   (例) 友達をイラブカス
イロク  ……  乾く    (例) 田んぼがイロク
ウッタツル ……補強する   (例) 壁に板をウッタツル
オーキニ …… ありがとう
オジー  …… 恐ろしい
オラブ  …… どなる 叫ぶ
カヤル ……  倒れる    (例) 塀がカヤル
ガナ ………  ほど     (例) お菓子を100円がな買う。
ギューラシー… 仰々しい
キル ………  できる    (例) 1人で帰りキル。
キ …………  から     (例) 雨が降るキー行かん。
キビショ ……  急須    
クリー ……… くれよ 下さい おくれ
ゲサキー……  下品な    (例)ゲサキーこと言うな。
コラユル ……  許す    (例)こらえチ クリー
コシー ……… 狡猾な ずるい
ゴテーシン…… 怠け者
コズミ ………  稲(わら)をつみあげたもの
コソグル……… くすぐる
サカシー……… 健やか
ザマネー……… たくさんな 多い
シルシー……… 陰うつだ 煩わしい
シコー ……… 用意 準備 (例) 早くシコーしろ
ジリー ……… ぬかるさま   (例) この道はジリー
シャッチ……… 無理に、わざと
のジョー……… ばかり     (例) 本のジョー読んじょる
シュージ …… 小路
スソゴ  …… 末子
スモスクレン… 役に立たない つまらない
ズツネー …… 苦しい 情けない
セセロシー…… 煩わしい うるさい
ゾークル……  からかう、おどける(例) ゾークンナ からかうな
ダル ………  疲れる      (例) ダリーな。きついな
タイゲー …  大概
チョル ……  ている      (例)雨が降っチョル
ツリヤガリ…… 軽率な人 あわてもの
テゴ  ……… 助手       (例)俺のテゴをシチクリー
ドベ ………  びり       (例)運動会ではいつもドベだ
トット ……… 大層       (例)こんな人はトットすかん
ナオス ……  しまう 片付ける (例)その機械をなおせ
    ……… 関東での話 修理することと勘違いされる。
ナシー ……  なぜ      (例)ナシーそんなことをするんか
ナー ………  か(疑問)     (例)ミカンいらんナー
ヌリー ……… のろい
ネキ ………  側そば 際    (例)あまり俺のネキによるな
ネブル ……  なめる しゃぶる
ネ   ……… 無い   (例)あれがネー これがネー
ハザクル …… 仲間外れにする
ハブタ ……… 短気 やけ (例)うちの子はすぐにハブタをかえす
はりこむ …… 精出す    (例)仕事ハリコンジョルナ。
ババイー …… まばゆい まぶしい
ブゲンシャ … 財産家
ホグ   …… 穴をあける
ホタル  …… すてる 投げる (例)仕事はホタリ出す
マテー  …… おとなしい 気が弱い
ムゲネー …… かわいそう
ムゾガル …… かわいがる
メンドシー ……はずかしい 体裁が悪い
モガウ  …… 抵抗する。さからう
ヤッパー …… やはり
ヨダキー …  大儀だ ものうい
…ヨル ……  つつある   (例)バスがキヨル。
ヨコイ  …… 休憩
ワキヤガル … ふざける
ワヤク  …… いたずら、じゃま (例)あの子はわやくばかりする
ワヤ   …… だめ ぶちこわし (例)この子がワヤにした

最後に付け加えたいのが[イッスンズリ] これが方言だとは生まれてこの方知りませんでした。最近のテレビ番組で知りました。そして、1000kmも離れた上越地方でも使われているそうです。
一寸ずり この言葉ほど、車の渋滞状況を適格に表した言葉はないと思っていました。私だけでなく、多くの大分県人も標準語と思っているのではないでしょうか。当初の方言集から私がわかる範囲内での方言を選んでみましたが、それでもいくつかは遠い思い出の言葉になっています。何か方言が失くなっていくことに寂しさを感じました。