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奨順社と小手川善次郎
高田公民館の出入り口の横に石碑が立っていますが、何の石碑かわかりますか。
「財団法人 奨順社」の石碑なのだそうです。言葉の意味からすると
奨順の意味(日本国語大辞典より)
たすけしたがうこと。勧奨し順行すること。また、すすめ導くこと。
※大日本帝国憲法発布の勅語‐明治二二年(1889)二月一一日「其の朕が意を奉体し、朕が事を奨順し」 〔孝経‐事君章〕 だそうです。
財団法人 奨順社とは
碑文から奨順社設立に至る経緯を簡略に書いてみます。
昭和3年8月、当時の高田村大字関園字仲間出身の小手川善次郎氏が高田村に地区内に有する広大な宅地、畑地、(評価額合計18,750円)および小手川理平氏所有高田銀行株券100株(時価1250円)を高田村に寄付(現在の価格にして12億3000万円)を申し出たことから設立された財団です。
昭和4年1月に文部大臣から「財団法人 奨順社」が許可され、爾来今日に続いています。現在、「宅地294坪と定期預金1700万円」が基本財産としてその利息で寄付を行っています。<一時期、農地開拓により農地を没収され収益のない時期もありました>
(小手川善次郎氏自信は宮崎の高千穂で生まれそこで商売をされていました。しかし、父、祖父は高田の生まれ育ちです。))設立目的は、「高田村子弟の教育育英・公益事業の推進・社会福祉のために役立てる」で、長年に渡り現在まで寄附等の補助事業を継続してきました。今年も高田小学校に本を寄贈されています。
(ただ、現在の低金利のため思うように運用ができていないようです)
詳細を石碑の碑文及び高田村志から書いてみようと思います。
【碑文】
碑文沿革
高田村大字関園出身、当時現住所 宮崎県高千穂町小手川善次郎翁ハ、地区内保有スル全財産宅地[552]坪、畑[十四丁八反]及高田銀行株券[百株]ヲ昭和3年高田村ノ公共施設、並ニ社会福祉ノタメ寄付申出アリタルニヨリ、村長岡松準平氏ハ希レニ視ル此ノ美挙ニ感激、直チニ其ノ旨村会に提案ヲシテ採択スル事ニ決定、以テ別途会計ニテ処理スル事ガ適当デアルトシ「財団法人 奨順社」ヲ設立シ、文部大臣ノ認可ヲ得、
総テノ手続を完了シ、爾来地区内ノ教育並ニ公益事業及社会福祉ノタメ、不尠(すくなからず)貢献シツツアルトス。不動産ハ農地改革ニ依テ、小作人ヘ譲渡シタルタメ収入ハ著シク減額シタルガ、今尚ホ地区内施設ノタメ有効ニ助成シテ居ル。今般役員会ハ翁ノ美徳ヲ永遠ニ称ヘ、此ノ厚意ヲ傳
承セニガタメ此ノ碑ヲ建テル
昭和四十四年十月建立 元村長 岩尾 亀雄
元理事 小手川 又吉
【高田村志より】
奨順社設立の経緯
昭和三年八月、宮崎県高千穂町で高田名産の鎌など金物及び雑貨を営む高田村大字字関園仲間出身の小手川善次郎氏が高田村内に所有する畑地四丁七反六畝十二歩、宅地五五二坪と家屋五棟と弟小手川理平氏所有の株式会社高田實業銀行の株券100株を高田村に寄付したいと村長 岡松準平氏に申し出がありました。ご両名による寄付の動機と目的は「昭和天皇の御大典奉祝を無窮に記念して高田村の子弟の教育育英及び公益事業の推進に役立たせる」としております。村長岡松準平は早速村議会に諮り、有難く頂戴することとし、岡松準平と米野団平(当時の高田小学校校長)が設立総代となり「財団法人 奨順社設立認可申請書」を文部大臣へ提出し、認可を得てこれより生じる収益金を教育ならびに社会福祉事業、公益事業の補助金として貢献していた。しかし、昭和21年に畑地は「農地改革」で没収され小作料金がなくなり、更に、平成9年~12年には「超低金利制政策」で預金金利もないに等しい状況となり、補助事業もできなくなった。平成15年頃より金利がやや上がりごく僅かな収益が取れるようになったので僅少だが再び補助事業を再開している。(高田村志に十数年前に書かれたものであるが低金利の状況は依然変わってはいない)
小手川善次郎氏の人物像
父多次郎氏は祖父半次郎氏共に宮崎県高千穂に高田鎌ならびに金物類を行商し粉骨砕身して業績を挙げ、祖父半次郎氏の没後に高千穂に移住し金物及び雑貨店を開きその名声は広がり、後には呉服商をも併設した。
その子の源三郎こと善次郎氏(系図で見ると改名し善次郎という名前を引き継いでいる)は高千穂で生まれ呉服商”かなや”を営む傍ら、蚕業組合長などをつとめ、地域経済の振興に貢献した。
奨順社の事業
奨順社の寄付行為(寄付行為とは財団を運営管理するための根本規則の書面をいう)に謳われているように「敬神崇祖思想善導その他公益事業を行う」とありその為には講演会の開催、高田小学校奨学金、公益事業に対し寄付をすると明記されている。
「続高田村志より」
具体的な事例は省略させていただくが、高田校区の小学校、幼稚園、こども園、公民館、長寿会、体育協会、等々の団体に寄附をしてきました。本年度も高田小学校の図書館に約20万円分の児童向け図書を寄贈しています。
詳細な財産目録。及び運用等については「高田村志」等に書かれているので興味のある方はそちらを参照してください。
追記