第1回、第二回とアップしましたが、今回は途中のデーター編を飛ばし、第三回は最終章の「将来の部」に行ってみたいと思います。
また、「 将来の部 」は総論、農業、工業、商業、……と続きますが、今回は①総論 ➁農業を第3回としてアップします。

高田村是 【将来の部】

当時の高田村を代表する人たちが、村の未来を真剣に憂い、住民に奮起を促している熱い思いが伝わってきます。

 今回は明治時代の文書で読みづらい箇所もあるので先に現在文でまとめ、その後、当初の原文を後に表記しています。

1・総   論

自治の基本は足元から


自分を律し、家庭を整え、近所同士が仲良くし、地域の人々が親しみ合う。このように身近なところから始めて、ひいては郡全体、県全体へと良い影響を広げていくことこそが、国を豊かに強くする根本であり、地方自治の本当の目的もまさにここにある。

したがって、我が村の繁栄を願うのであれば、それぞれの家庭が経済的なゆとりを持てるようにし、地域の公共のために働き、ブレない確固たる方針を定めて、心を一つにして力を合わせていかなければならない。

そして、この方針をハッキリと決めるためには、まず村の現在の状況を正しく把握し、これまでの歴史や移り変わりを調べた上で、未来の計画をじっくりと考え抜かなければならない。これこそが、今回「村是(村の方針)」を調査した一番の目的である。

考えてみれば、我が村は江戸時代(藩政時代)から「質素倹約・勤勉」という素晴らしい美風が残っており、だらしなくお金を浪費するような悪い癖に染まることが少なかった。そのため、村全体の収入と支出を計算すると、年間で2万数千円もの黒字(貯蓄)を出すことができている。

村の財政は「隠れ赤字」の状態


しかし、これは結局のところ、一部の富裕層が持っている資産(土地や株など)から生まれる利益(不労所得のようなもの)のおかげである。 村民の日々の衣食住にかかる「消費」と、実際に働いて生み出す「生産力」を純粋に比べた場合、その黒字はわずか数百円にすぎない。油断すれば、働くことによる生産が、日々の消費に追いつかなくなってしまう一歩手前なのだ。

もしも、「資産から出る利益」を、働いて稼ぐ「生産力」の赤字補填に回すようなことになれば、最終的にはその大切な資産そのものを食いつぶしてしまうことになるのは目に見えている。

資産を食いつぶすな、水害に備えよ

特に、我が村のような水害が起きやすい土地では、ひとたび大雨などの災害が起きれば、予測できないほどの甚大な被害を受けることは避けられない。 だからこそ、「日々の生活費(消費)は、常に自分たちが働いて稼ぐお金(生産)の範囲内でまかなうのだ」という覚悟が必要なのは言うまでもない。いくら村全体に貯蓄(剰余)があるからといって、決して楽観視してはならないのだ。ましてや、財産の格差(貧富の差)については、生活が苦しい庶民が多数を占めているのが現状なのだから、なおさら危機感を持たねばならない。

貧富の差と時代の変化への危機感

さらに、世間の付き合いは日に日に盛んになり、交通や輸送の便も毎月のように発達している。それに伴って衣食住の生活水準も年々高くなっており、日本の国力が発展するにつれて、私たちが国に納める税金などの負担も増えている。 私たちの前途は本当にやるべきことが多く、その責任はますます重く、そして大きくなっている。どうして一日たりとも、のんびりと何もせずに過ごしてよい時(時代)だと言えるだろうか(いや、言えない)。

だから「7カ年計画」を実行する

そこで、ここに将来7年間にわたって実行すべき目標を定め、項目を分けて以下に記述する。 村全体が一致団結して、村の勢いを盛り立て、時代の進歩に遅れないように努力し、そうして国家に貢献しようではないか。


(二)・農 業

一・農会の活動  二・裸麦・小麦

 概   要
我が村の現在は、2,553人の知識と労力によって、19万800円80銭8厘の生産力を有しています。

その内訳を見ると、農業が12万8,721円30銭9厘。工業が3万4,049円31銭9厘。商業が1万87円81銭であり、職人としての労働や、その他の勤労といった雑業を一括すると1万7,942円37銭となります。農産物は、実に総生産高の約6割7分という高い割合を占めています。

(我が村には)林野が全くなく、手のひらに乗るような小さな水田すらありません。耕地はすべて畑(陸田)であり、その面積もわずか263町4反7畝3歩(約261ヘクタール)に過ぎません。

しかし、農業によって自営独立を図る覚悟が必要であることは、これらの数字がはっきりと示している通りです。また、地理的な状況から考察しても、農業を改良・発達させることが、最も差し迫った重要な急務であると言えます。

したがって、まずはこの農業の指導や奨励の方法を講じ、まさにこれから実行に移していこうとするものであります。


①・農会の活動

※戦前に農業技術の改良や普及、農村の振興などを主な目的として組織された農業団体です。戦後にできた農業協同組合(JA)の母体であり、前身です。

農業の現状と農民の意識

農業が我が村の経済の基盤であることは、すでに述べた通りであり、その盛衰はそのまま村民の生活や勢いに直結しています。

しかしながら、世の中の文化や制度をはじめ、商業・工業などあらゆる事業が「日進月歩」で大きくその姿を変えているのに対して、農業だけはいつも他のさまざまな事業と肩を並べて進むことができない状況にあるように見えます。

これは、農家の多くに新しいものへと進む気概(進取の気象)が乏しく、古い習慣から抜け出すことができずに、小さな成功で満足してしまい、農業を改良し発展させようという意欲を起こす者が少ないからにほかなりません。

経済的な格差と危機の到来

その一方で、付き合い(社交上)や仕事(業務上)における支出はますます増えています。それなのに農業の生産力は、こうした消費の拡大に追いついていません。その結果、自分の土地で耕作する「自作農」が自然と数を減らし、土地を借りて耕作する「小作農」がますます増え、貧富の格差がさらに激しくなろうとしているのが現状です。

(財産の不均衡な実態のデーターについては、またアップはしていません)

この事態を挽回するためには、農業の改良と増殖をはかり、長所を伸ばし、短所を補って、熱意を持ってこれを実行していかなければなりません。そして、この実行をはかるには、農業を営む人々が一致団結し、互いに道徳や義理を重んじ、誠実にその仕事に打ち込まなければ、到底その目的を達成することはできません。これこそが、国(中央農会)から県・郡・町村にいたるまで「農会」が設立されている理由なのです。

本村農会の課題とこれからの対策

しかしながら、我が村の農会は組織されて以来、いまだに活動費を支出したことがなく、したがって何一つとして事業の成果を出せていないのは、実に遺憾なことです。

もともと、我が村において農会が活動できる分野が少ないこと(例えば、植林や畜産、米作りなどは計画を立てる手段がなく、普通の農村とは大きく様子が異なっていること)が、農会が振るわない原因の一つではあります。

しかし、畑に目を向ければ、栽培されている種類が多様で研究する価値のあるものが非常に多く、また野菜(蔬菜)や養蚕などは実に重要な物産であり、全力を注いで改良・発展をはからなければならないものです。



したがって、今後はこの「農会」という機関をしっかり動かして利用し、上級の農会(郡や県の農会)とも緊密に連携を取りながら、品評会の開催や副業(余業農業)の奨励などを行っていく必要があります。これによって農業関係者を刺激し、奮起させ、最終的に収益を大きく増やすことを期待するものです。

②・ 裸麦・小麦

【裸麦】

裸麦は、当村の農産物の中で第1位の生産量を誇っています。 作付面積は155町2反25歩(約154ヘクタール)、収穫量は3,104石1斗6升、その価値は2万4,833円28銭にのぼります。このうち、村内で1,863石6斗9升、1万4,909円52銭を消費し、毎年1,240石4斗7升価値:9,923円76銭を他地域へ移出(輸出)しています。
裸麦は、一般の農家が普段の食事(主食)として食べているだけではありません。それ以外の家庭でも、健康への配慮(衛生上の顧慮)や経済的な理由から、お米に混ぜて炊いて日常的に食べる人がだんだんと増えており、需要はますます高まっています。
さらに、味噌や醤油の醸造に使われたり、馬の餌(馬糧)にされたりと用途が非常に幅広く、前述の通り当村で唯一無二の重要なお産物であるため、その栽培を決して軽視していい加減に扱ってはなりません。

当村には水田が1坪もありません。畑で育てる「陸米(おかぼ)」の生産量はわずか621石2斗3升しかなく、毎年524石6斗9升ものお米(もち米を除く)が不足するため、外部から買い入れて(輸入して)いる状況です。そのため、他の農村に比べても裸麦を食べる量が必然的に多く、こうした事情から、比較的「大切に育てよう(愛護栽培)」という意識は強いように見受けられます。しかし、それでもなお、注意して改良すべき点は決して少なくありません。

【小麦】

小麦は、当村の農産物の中で第4位、移出(輸出)額では第5位に位置しています。 作付面積は60町2反6畝4歩(約60ヘクタール)、収穫量は1,084石7斗、その価値は9,762円30銭を産出しています。

このうち、村内で829石7斗(価値:7,467円30銭)を消費し、毎年255石(価値:2,295円)を他地域へ移出しています。

小麦の栽培方法は裸麦と同じであるため、これより、栽培における「注意・改良すべき重要事項」を次に挙げます。

イ.撰種法(種選びの方法)

種子は、必ず塩水選(えんすいせん)を行う必要があります。裸麦も小麦も、品種によってそれぞれ比重が異なるため、当然、[使用する]塩水の比重(濃度)も適切に変えなければなりません。

ハ.播種量(種まき量)及び方法

播種量は、場所や人によって一定ではない。しかしながら、各県農事試験場の成績によれば、一反歩あたり3升ないし5升を最も適度とするとある。これ以上にその量を増加させるに従って、収穫が減少する割合となっているため、注意すべきことである。

種子を播き下ろし、その被土(かぶせる土)の深浅が、すぐに収穫に影響するものであることは、試験に照らしても明らかである。最も適度なのは、1寸内外に被土を行うのが良いとする。

二.肥料

肥料の一種である厩肥(きゅうひ)を堆積して、根肥(元肥)とすべきである。追肥とするものも、できうる限り堆肥とするのが適当である。

然るに、本村(高田村)の如きは原野が絶無であり、青草に乏しく、従って牛馬の飼育は僅かに46頭に過ぎない現況である。それゆえに厩肥の産出額は甚だ少なく、勢い(必然的に)多量の金肥(購入肥料)を施用せざるを得ないのは、やむを得ない状態である。油粕、大豆粕、およびその他の人造肥料を、堆肥と混淆(ミックス)して施用すべきである。


ホ.麥奴(ばくど:麦の病気)予防

麦の病気(黒穂病など)の予防法は種々あるが、実行するには煩雑な手数を要するため、その詳細は省き、ただ簡単な方法を示せば以下の通りである。

木灰(きばい)1升に対して熱湯を2升注ぎ、その上澄み液を取り、これに二日二晩(二昼夜)種子を浸した後に播種(種まき)するのが良い。

へ.収穫期

収穫期として最も適切なのは、麦の穂が黄色に変わり、穂首がやや黄熟した時期において刈り取るべきである。

ト.乾燥

刈り取り後は田圃(たんぼ)に放置せず、ただちに(稲を干す)稲架(はさ)のようなものを拵(こしら)え、その棚に穂を内側に向けて積み重ね、天辺(てっぺん)には雨露を凌ぐ設備を施すのが良い。

これは空気の流通を便利にし、中央の穂の部分まで十分に乾燥することによって、品質も良好となるからである。

【結び】

以上に挙げた各項目を(住民一同が)励行したならば、裸麦・小麦ともに、一反あたりほぼ2斗(約36リットル)の増収を得られることは確実であると信じる。そうなれば、次のような(素晴らしい)利益を見ることになる。


種別作付反別単当たり増収増収額単価価格
裸麦137町5025200275石0178円0002200円136
小麦60町2604200120石5239円0001084円707
3264円843

当時の高田村が、限られた条件の中でいかに知恵を絞り、品質向上と増収を目指していたかがよく分かる文書でした。

次回は農業部門の「蔬菜(野菜)」について書きます。
当時の高田村でどのような野菜が注目され、どんな栽培指導がなされていたのか興味深いところです。また高田の土地ならではの野菜栽培も気になるところです。

農業関係 原文

<旧漢字を新漢字に代えて表記しています また句読点等がないため勝てながらこちらで入れさせてもらいました。>

資料提供 江藤正光氏(亀甲)>

身を修め家を斎へ隣保相和し郷党相親み、以て一郡一県に及ぼすは国家富強の根源にして自治制度の本旨亦実に茲に存す。
故に一村の繁栄を求めんと欲せば、各戸資力の充実を図り、公共のことに従い、一定不変の方針を定め、協心〇〇(字が消滅)(虫食いで消えている部分は、文脈から「協心戮力(きょうしんりくりょく:心を一つにして力を合わせること)」という四字熟語が入ると思われます。)せざるべからず。
而して這個(これ、このを意味する)の方針を確定せんには先ず現況の知悉し既往変遷の状況を査察し以て将来の計画を考究せざるべからず。
これ村是の調査の主眼となす所なり。蓋し本村は藩政以来、質素勤勉の美風存じ放逸乱費の悪弊に浸染すること少なきを以て、収支歳計二万数千円の余剰をみることを得たり。然れどもこれ畢竟(ひっきょう 思うに)富裕なるものの資産より生ずる収益に因るものにして、衣食住に要する消費と生産力とを比較する時は過剰僅かに数百円に過ぎず。稍もすれば共生産は共消費を補うに足らざらんとす。若し資産より生じる収益を以て生産力の不足を補填するか如きことあるに至らんか勢遂にその資産、その物を傷つくるに至るや必然なり。殊に本村の如きは水害地なるを以て一朝事あるに於いては実に不測の災害を蒙ることなき能わず。故に消費は常に生産を以て支ゆるの覚悟を要するは俟たざるところにして剰余ありといえども直ちにもって楽観すべきものに非ず。況や(いわんや)財産の偏重偏軽は現況部(第二章)に表示せるが如く下流の細民多数を占むるに於いてをや。而して社交は日一日に頻繁を極め交通運輸の便は月を逢って開け、衣食住の程度亦年と共に上進し国運の発展は負担の増加を来し、吾々の前途は実に多忙にしてその責任益々重且つ大ならんとす。豈(あに)一日も悠々閑過すべきの秋ならんや。
茲(ここ)に将来七ヵ年間に実行すべき目的を定め、これを分かちて次に記述す挙村一致、村勢の振作(しんさく 気持ちや志気を奪い立たせること)を図り、時運の進展に後れさらんことを努め、以て国家に貢献する所なかるべけんや。

   

農 業( 原 文 )

概   要

本村の現在は2553人の知識と労力とに因りて19万800円80銭8厘の生産力を有す。而してこれが内訳を見るときは、農業20万8721円30銭9厘。工業3万4049円31銭9厘。商業1万87円81銭にして、職人労働、勤労等の雑業を一括して1万7942円37銭となり、農産は実に総生産高の約6割7分の多きに居る。 
林野絶無にして手大(てだい 手のひらに乗るような大きさ)の水田なく、耕地はことごとく陸田にしてその面積また僅かに263町4反7畝3歩に過ぎずと雖も農を以て自営独立を図るの覚悟を要するは数字の明示する所にして地理上の状態より考察するも農業の改良発達を以て至緊至要(しきんしよう) 急を要する重要なこと」の急務なりとす。故にまずこれが指導奨励の方法を講じ、将(まさ)に実行を期せんとす。   

農 会 の 活 動

農業は本村経済の基礎たること既設説の如くにしてその盛衰消長は直ぐに村民の体威に関する所なり。然り而して文物制度より商工その他百般の事業に至るまで日進月歩大にその面目を改めつつありと雖も独り農業は常に自他百般の事業と〇(不明)駆すること能わざる観あり。これ農家の一般に進取の気象に乏しく旧慣を脱する能わずして小成に安じ改良発達の念を興起するもの少なきに由(よ)らずんば非ず。然るに社交上及び業務上の歳出は益々増加しその生産力は消費膨張に伴うことあたわずして自作者自然にその数を減らし小作者益々その数を増加し貧富県隔(けんかく 大きな差)をして益々甚だしからしめんとするを見る。財産の不平均なることは第二号に四に示すが如くにしてこれを挽回せんには農事の改良増殖を謀り長きを取り、短きを補い、熱心これが実行を期せざるべからず。これが実行を謀るには農業者共同一致互に徳義を重んじ誠実その業に就くに非ずんば到底その目的を達する能わざるなり。
これ中央農会より県郡町村農会の設立しある所以なり。而して本村農会は組織以来未だ軽費支出するなく従って一として事業の成績を見るなきは実に遺憾とする所なり。由来農会の活動すべき区域少なく殖林の如き、畜産の如き米穀の如き皆これ計画を施すの術なく普通農村と大にその趣を異にするは不振の一因なりと雖も畑の如きは栽培種類雑多にして研究の価値あるもの甚だ多く、また蔬菜の如き蚕業の如きは実に重要物産にして全力を傾注して改良発達を講ぜさるべからざるものたり。
故にこの機関を活動利用して爾後大いに上級農会と気脈を通じ、品評会の開催、餘業農業の奨励等当業者を刺撃衝動し以て収益の増大ならんことを期す。

裸麦・小麦

裸麦は本村生産中第一を占め、作付反別155兆2反25歩、収穫3104石1斗6舛、価額2万4833円28銭を算出し、村内に於いて1863石6斗9舛、価額1万4909円52銭を費消し、年々1240石4斗7舛価額9923円76銭を輸出しつつあり。
裸麦は一般農家の常用たるのみならずそのほかに於いても、衛生上の顧慮ならびに経済上の点より米と混炊して常用となすもの漸次多きを加え、需要益々増加しつっつあり。且つ味噌醤油の醸造に用い、あるいは馬糧(ばりょう 馬のえさ)等に使用し用途最も広汎にして前項のごとく本村唯一の産物なるか故にこれが栽培は決して等閑に付すべからず。(物事を軽く見ていい加減に扱うことはできない)
本村は一坪の水田なく陸米の産額僅かに621石2斗3舛にして毎年524石6斗9舛の米穀不足を(糯米 もちごめを除きて)輸入しつつあるの状況にして他の農村に比し裸麦を用ゆるの量もまた多く、これ等の関係より比較的愛護栽培の念深きが如しといえども尚注意改良を要する点少なからず。

小麦は本村生産の第四位にして輸出の第五位に居り作付反別60町2反6畝4歩、収穫1084石7斗、価格9762円30銭を産し村内に於いて829石7斗、価格7467円30銭を消費し毎年255石、価格2295円を輸出す。
小麦の耕作法は裸麦と同一なるを以て今次にこれが注意改良の要項をあげん。

イ・撰種法(良い種を選ぶ)

「撰種(せんしゅ)」とは、より健全で発芽や生育が良好な作物の種子だけを選び出す作業(選種)のことです。

種子は必ず鹽水(えんすいせん)を行うべし。裸麦、小麦とも種類により各比重を異にするをもって塩水の比重も勢い異ならざるべからず。

ロ・播種期(種をまく時期)

各府県農事試験成參するときは麦類の播種は十月下旬より遅くも十一月上旬までに行うものその収穫多く漸次期節の遅るるに従おうて減収を示せり。而して
上期ルノ止ムラ得サルモノアランモレ等の前作物収穫前作の関係上播種期遅るるのやむおえざるものあらんもこれ等は前作の収穫を早むる方法を講ぜざるべからず。



ハ・播種量及び方法

播種量はケ所に依り人に依り一定せず。しかれども各県農事試験場の成績に依れば一反
尤歩三升ないし五升を尤も適度とすとあり。これ以上はその量を増加するに従い、収穫減ずる割合となり居れは注意すべきことなり。
種子を播下しその被土の深浅は直ぐに収穫に影響するものたること試験に照し明なり。もっとも適度なるは一寸内外に被土をなすを宜しとす。

二・肥 料

一肥料の廐肥を堆積して根肥となすべし。追肥となすものもできうる限り堆肥となすを適当とす。然れども本村の如きは原野絶無にして青草に乏しく従って牛馬ノ飼育僅かに四十六頭に過ぎざるの現況なるが故に厩肥の産額甚だ少なく勢い多量の金肥を施用せざるべからざるはやむおええざる状態なり。油粕大豆粕及其他人造肥料を堆肥と混淆して施用すべし。


ホ・麥奴豫防(病気の予防)

一麥奴像防種々あれども実行に煩雑の手数を要するが故にその詳細ををせず唯簡単なる方法を示せば木灰一升に熱湯を二升注ぎ上澄液を取りてこれに二昼夜種子を浸し、後播種するが宣とす。
へ・収 穫 期

収穫期の尤も適切なるは麦穂の黄色に変じ、穂首のやや黄熟したる時期において刈り取るべし。

ト・乾燥

刈取後田圃に置かず直に稲架の如きものを拵(こしら)へ右棚に穂を内側に向け積積重子
頂きに雨露を凌ぐ設備をなすのは空氣ノ流通に便ならしめ中央穂のケ所充分乾燥するにより品質も良好となるなり。
以上各項を励行せば、裸麦、小麦共二反当たりホ二斗ノ増収を得べきは確実なりと信ず然るときは次の如き利益を見る。